声の力
ことば・こころ塾としては、ことばに鋭敏でありたいと願う。ことばは無言の声を含め、声と一体と考える。その意味でも、岩波書店で編集された「声の力」で紹介される4人のことばは熟成された、美酒のようにしみわたってくる。年初にあたって、じっくり味わってみたい。
「文字中心の現代にあって,私たちは「声」による感覚を見失いがちです.「声の力」を再考することで開ける可能性,「生きる力」の鍵がこの本にはたくさんあります. 「語り屋」とご本人もおっしゃる臨床心理学者の河合隼雄さん. 「さっちゃん」などの心に残る童謡をたくさん作られている阪田寛夫さん. 詩人として,朗読活動も活発になさっている谷川俊太郎さん. オペラ歌手としてのみならず,子どもの歌の演奏会でも大活躍の池田直樹さん. 「声」を語るに最もふさわしい4人の方々が,ご自身の経験や取り組みから,「声」「歌」「語り」を,様々な側面から論じてくださいます.また,「私のなかの歌」をテーマとした4人一堂に会してのシンポジウムでは,わらべうた・唱歌・讃美歌・童謡・軍歌などについての体験的なお話から,子どもの歌の歴史を愉しく通観することができます. 装幀は吉田篤弘さん・浩美さん(クラフト・エヴィング商會)です.」【編集部:渡部朝香】
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〈谷川〉 肉声の持つ力というのは,人間の普段意識できないような臓腑というか内臓というか,そういうものとつながっているような気がして,それがやっぱり歌の力だと思うんです. 〈河合〉 そのとおりに思いますね.いまは確かにネットでパッパッと連絡できるから,いかにも通じあっているように見えるけど,ほんとうに人が1対1で人間として会うということはすごく違うと思います. (本文より)